小池百合子 カイロ大学「超法規的」卒業の闇「恩返しとしてエジプトに多額のカネを…」【浅川芳裕×郷原信郎】
「小池百合子 都知事三期目に出馬表明へ」。先月、元側近から爆弾証言が飛び出し、小池百合子の学歴詐称問題が再燃した。エジプトの名門・カイロ大学を本当に卒業したのか。同大学に在籍経験を持ち、その時の体験・知見を一冊に詰め込んだ『カイロ大学〜〝闘争と平和〟の混沌』の著者でジャーナリストの浅川芳裕氏が、弁護士・郷原信郎氏のYouTubeチャンネルに出演。学歴詐称疑惑の真相に迫った。そこで明らかにされた驚くべき事実、そして小池とエジプト国家の恐るべき闇とは? 都知事選前に必読のテキスト!
■学生ファイルは軍事機密レベルで管理されている
郷原:小池百合子都知事の学歴詐称問題が再燃しています。4年前に出版された『女帝 小池百合子』(文春文庫)では、小池氏と一緒に暮らしていたこともある女性が匿名で登場し、疑惑が指摘されていました。そして昨年秋にはその人物が実名を公表したことで、本に書かれていた内容の信憑性が増し、疑惑が深まりました。さらに今年、小池氏の側近中の側近でもあった小島敏郎氏が、小池氏の学歴問題の火消しになったとされる「カイロ大学声明」について、自分が発案し小池氏側で文案を作ったものだと明かしました。
浅川さんは、エジプトやカイロ大学の事情に詳しいジャーナリストとして、2018年に『カイロ大学』(ベスト新書)という著書も上梓されていますが、この問題をどのように見ていますか。浅川さんがこれまで書かれたものを読むと、問題の本質は学歴の実態があったのかなかったのか、といった単純なことではないと感じましたが。
浅川:まず、声明について触れる必要があります。小池氏の学歴問題が取り沙汰された際、カイロ大学は彼女の卒業を認める声明を出しました。そして、エジプトメディアはこの声明を好戦的に報じていたんですね。例えば、こんな見出しが躍っていました。
「カイロ大学、小池都知事のために都知事選に火をつけた」
「カイロ大学、都知事の卒業証書を認めない日本メディアに対し法的手段で脅迫」
「カイロ大学、危機に瀕する東京都知事を救うために介入」
彼らの報道というのは100%検閲を受けた大本営発表であり、エジプト政府の意向、ひいては、エジプト軍事政権の対日戦略を代弁したものです。
日本の常識からすると、なぜ一大学のことに政府がそこまでするんだ、という疑問も出るでしょう。
実はエジプトの法律上カイロ大学は、国会、警察、軍隊と同等の「国家機関」という位置付けなのです。つまり、疑惑を受けてカイロ大学の名誉が傷つけられることは、彼らからすればエジプトという国家を侮辱されたに等しいことなんです。
声明でもはっきり、「カイロ大学及びカイロ大学卒業生への名誉毀損であり、看過することができない」と明記されています。だからこそ、「本声明は、一連の言動に対する警告であり、我々はかかる言動を精査し、エジプトの法令に則り、適切な対応策を講じることを検討している」と声明は侮辱への法的措置まで言及するわけです。
郷原:なるほど。学歴詐称問題を追及することは、そこまで大きい話になってしまう。日本の大学の物差しを当てはめても、今回の問題は測れないですね。
浅川:そして小池氏のカイロ大学卒業に関わる情報も、「軍事機密」に等しいレベルで管理されています。小池氏の卒業証書やテストの点数といった学業の情報は、学生ファイルとして二箇所に保存されています。大学本部と卒業した学部です。
これまでカイロ大学を取材した日本の記者は文学部に取材に行くと、小池氏と通じている日本語学科にまわされて、「ちゃんと卒業している」と通り一辺倒の回答をえて、撃沈するパターンでした。
そこで、もう一つの本部の方に以前学生ファイルを調べに行ったところ、天下りの軍人があらわれ「待った」がかかったんです。カイロ大学は、一般の真面目に勉強する学生にとっては日本と変わらない普通の大学ですが、反政府系の学生運動に参加したり、ジャーナリストとして疑いの目で見たりすると、「軍」の世界に引きずりこまれてしまうような大学なんですよ。
その状況を現地メディアは「軍幹部が大学の管理職の要職を独占しており、学びの場は軍の兵舎と化している」と描写しているほどです。
郷原:小池氏の卒業は、軍も巻き込む国家レベルの特別マターだったと。
浅川:私は小池氏の卒業を「超法規的」なものだと表現しています。卒業証書の信憑性や学業実態の有無というものではもはや測れません。声明にはエジプト・アラブ共和国の国章が押されており、これはエジプトが国家の意志として認めていなければ出せませんから。
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浅川芳裕著『カイロ大学 〜〝闘争と平和〟の混沌』
\\待望の大重版//
ベスト新書・定価:1320円(税込)
〝闘争〟と〝混乱〟が生み出す世界最強のカイロ大学
筆者がカイロ大学のオリエンテーションを受けたとき、担当者からいわれた最初の言葉は「混乱の世界へようこそ!」です。実際、カイロ大学のキャンパスで実体験した混乱の根は想像以上に深いものでした。そんな混乱を経験済みのカイロ大学出身者の共通点は、乱世に強いことです。カイロ大学は世界に混乱をもたらす人物と平和を求める出身者が混在しているのが特徴です。どちらの側につくにしても、両者の間では死ぬか生きるかの思想闘争が繰り返されています。混乱と闘争という学風を持つカイロ大学が彼らの人生に、学びの園という領域を越えた影響を与えているというのが本書の主題です。
ようこそ〝闘争〟と〝混乱〟の世界へ
〝エジプトの東大〟その思想と実学とは
◉世界最強の大学といわれる理由
◉カイロ大卒の世界のエリート知識人たち
◉多くの日本人が学んだ学部とは
◉交渉術は必須科目
◉単位取得・運転免許も交渉次第
◉カイロ大学とカイロ・アメリカン大学の違い
◉カイロ大留学のメリットとは etc.
浅川芳裕(あさかわ・よしひろ)
1974年、山口県生まれ。ジャーナリスト。エジプトの私立カイロアメ リカン大学中東研究学部(1992 〜1993年)、国立カイロ大学文学部東洋言語学科(セム語専科ヘブライ語専攻)中退。アラブ諸国 との版権ビジネス、ソニー中東市場 専門官(ドバイ、モロッコなど)、『農業経営者』副編集長などを経て、『農業ビジネス』編集長。著書はベ ストセラー『日本は世界5位の農 業大国』(講談社+α新書)、『ドナルド・トランプ 黒の説得術』(東京 堂出版)ほか多数。訳書に『国家を喰らう官僚たち ─アメリカを乗っ取る新支配階級─』(新潮社)。中東・イスラム関連記事では『「イスラム国」指導者の歴史観』『なぜ増える? イスラム教への改宗』(いずれも『文藝春秋スペシャル』)など がある。弊社刊『カイロ大学 〝闘争と平和〟の混沌』(ベスト新書)がロングセラーに。